仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
普通の令嬢とはなにか違うとは思っていたが意外な告白にユーリスは驚くも黙って聞いた。
「でも、どれもお父さまには余計なことみたいで、そんなことしないで令嬢らしくしろとよく怒られました」
肩を竦めるフローラは自分なりに頑張ったんだけどなとちょっと拗ねた顔をする。
「私は父君の気持ちがわからなくもない。頑張りどころがずれてる気がする」
「え?そうなんですか？」
キョトンとした顔をするフローラ。
アーゲイド男爵は娘の社交界デビューを一年も遅らせ立派なドレスを用意するほどだ。経済的に多少困窮してるのだろうが貴族としての衿持ちだけは持っているのだろう。そんな彼が曲がりなりにも男爵家の娘であるフローラに使用人と同じことをさせるのは忍びないと思うのは当然で、令嬢らしく優雅に生活させたい思いが強いのではないだろうか。
それをフローラは正しく理解していないのだろう。自分のできることを探して空回りしているようだ。
すれ違ってはいるがお互いを思いやるいい親子だと思う。
「なれないことをして怪我をすることもある。父君は心配しているのだ」
「そうでしょうか」
納得はしていないだろうが父を想いはにかむフローラにユーリスは目を細めた。
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