仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
ゆっくりと館内を回りフローラは前に友人に勧められた本を見つけユーリスも一冊借りヒルト邸に戻った。
ふたり居間でソファーセットに向かい合わせに座り借りてきた本を開く。
いつも忙しいユーリスが一日フローラと一緒なのは初めてだった。
うれしくなったフローラは無表情のユーリスに怯まず本そっちのけではおしゃべりになる。
「それで、この本をそのお友達に勧められたのですが、魔法使いと竜の交流が……」
「少し黙って、本を読んだらどうだ」
「あ、そうですよね。ついおしゃべりが過ぎて、すいません」
「謝らなくてもいい。私は自分の本を読みたいだけだ」
「そうですよね、黙ります」
ユーリスにため息をつかれ煩さすぎたのだとフローラは口を噤んで本を開いた。
本好きの友人が勧めるだけあって冒頭から面白くいつの間にか引き込まれていった。
しんと静まり返った中にページをめくる音だけが微かに耳を掠める。
ふと、フローラは集中力が途切れ顔を上げると目の前で穏やかな顔で本を読むユーリスに目が釘付けになる。
切れ長の瞳は伏し目がちでまつ毛がふさふさ、スッとした鼻に薄い唇。艶々の黒い髪を陽の光が照らして天使の輪が出来ている。
長めの前髪に隠れた白い仮面は異質なはずなのに自然に馴染んで逆に神々しさが増している。半分顔が隠れていても、彼の魅力は隠せないようだ。
長い指がゆっくりとページをめくる。とても知的な雰囲気を醸し出すユーリスにフローラははほうっと小さくため息をついて見惚れた。
視線に気づいたユーリスがが不意にこちらを向く。
「どうかしたか?」
「いっいえっ!」
慌てたフローラは首を横に振り本で顔を隠す。
つい見惚れて見つめてましたなんて恥ずかしくて言えない。
フローラの顔は本で隠れてしまったが、耳がほのかに赤らんでいるのを目撃したユーリスはふっと微笑んだ。
穏やかな時間は陽の光のようにユーリスの心にも優しく降り注ぐ。
ユーリスが誰かと一緒にいてこんなに和んだ時間を送れたのは久しぶりだった。
ふたり居間でソファーセットに向かい合わせに座り借りてきた本を開く。
いつも忙しいユーリスが一日フローラと一緒なのは初めてだった。
うれしくなったフローラは無表情のユーリスに怯まず本そっちのけではおしゃべりになる。
「それで、この本をそのお友達に勧められたのですが、魔法使いと竜の交流が……」
「少し黙って、本を読んだらどうだ」
「あ、そうですよね。ついおしゃべりが過ぎて、すいません」
「謝らなくてもいい。私は自分の本を読みたいだけだ」
「そうですよね、黙ります」
ユーリスにため息をつかれ煩さすぎたのだとフローラは口を噤んで本を開いた。
本好きの友人が勧めるだけあって冒頭から面白くいつの間にか引き込まれていった。
しんと静まり返った中にページをめくる音だけが微かに耳を掠める。
ふと、フローラは集中力が途切れ顔を上げると目の前で穏やかな顔で本を読むユーリスに目が釘付けになる。
切れ長の瞳は伏し目がちでまつ毛がふさふさ、スッとした鼻に薄い唇。艶々の黒い髪を陽の光が照らして天使の輪が出来ている。
長めの前髪に隠れた白い仮面は異質なはずなのに自然に馴染んで逆に神々しさが増している。半分顔が隠れていても、彼の魅力は隠せないようだ。
長い指がゆっくりとページをめくる。とても知的な雰囲気を醸し出すユーリスにフローラははほうっと小さくため息をついて見惚れた。
視線に気づいたユーリスがが不意にこちらを向く。
「どうかしたか?」
「いっいえっ!」
慌てたフローラは首を横に振り本で顔を隠す。
つい見惚れて見つめてましたなんて恥ずかしくて言えない。
フローラの顔は本で隠れてしまったが、耳がほのかに赤らんでいるのを目撃したユーリスはふっと微笑んだ。
穏やかな時間は陽の光のようにユーリスの心にも優しく降り注ぐ。
ユーリスが誰かと一緒にいてこんなに和んだ時間を送れたのは久しぶりだった。