仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
夜になり自室に戻ったユーリスはいつもは気にも留めない星が気になって何気に窓を開け冴え渡る夜空を見上げた。
キラキラ光る無数の星々がやけに綺麗に見えてほうっと深くため息を零した。
その中に浮かんでくるのはフローラの笑顔。
彼女は陽の光のように眩しいと思ったが、こうやって夜空を見るとキラキラ瞬く星のようでもある。
(彼女といるのは心地いい。ずっとそばにいてくれたら……)
なんて、柄にもないことを思ってつい自分を嘲笑した。
(何を考えているのだ私は。彼女もすぐに自分の許を去っていくというのに期待してはならない)
昼間と違い夜は冷たい風が吹く。
暫く空を見上げていたが冷えてくると皮膚が引きつり頭痛がしてきた。
(いけない。外で冷たい夜風に当たりながら考えごとをするものではないな)
窓を閉めると手袋を履いた右手で仮面を押え眉間に皺を寄せた。

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