仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
「ユーリスさま、おかえりなさいませ」
「ああ……」
書斎にいたユーリスの許に訪れたフローラに続きティーセットを乗せたワゴンを押してマリアも現れ声をかける。
「ユーリスさま、今夜の晩餐は少し遅くなります。それまでフローラさまとお茶をお召になってはいかがでしょう」
「……ああ、そうだな」
頷いたユーリスに顔を見合わせにっこり笑うフローラとマリア。
デスクの前にあるソファーセットに座ったユーリスの前にフローラが座り、マリアがお茶とクッキーを置いた。
「あの、ユーリスさま……」
見た目からしていつものクッキーと違うと気づいたユーリス。
もじもじと言いにくそうにしているフローラを見て不思議そうに眉を上げた。
「そのクッキー、私が焼いたんです。図書館に連れて行ってくれたお礼がしたくて。ユーリスさま、昨日はありがとうございました」
「君が?」
「はい。でもそのためにグレイのお仕事の邪魔をして晩餐の時間を遅らせてしまいました。ごめんなさい」
フローラはスカートを握りしゅんと肩を落としている。
マリアは黙っていてもよかったのに、と正直に話したフローラの背中を見てクスリと笑う。