仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
「フローラさまは、本当に、お優しい方ですね」
「そんなことないわ。優しいのはユーリスさまの方よ。美味しくないクッキーを全部食べてくれたのだから」
味見をしていないフローラを気遣って全部食べてくれたユーリス。
フローラは有難さと申し訳なさと恥ずかしさがごちゃ混ぜになって、とにかく何度誤っても足りないと思う。
「私、何をやってもうまくいかないの。お勉強もお手伝いも。手先も不器用で我が家のシェフにお料理を習ってもお手伝いしかさせてもらえなかったのは、きっとこうなるとわかっていたからなのね」
頬杖をついたフローラはほうっとため息をついた。
「フローラさま、もう一度クッキーを作ってみましょう。今度は私が教えますから。きっと次は上手くいきますよ?」
「ううん、才能がないって思い知ったからやめておくわ。ユーリスさまにお礼をするはずがまたご迷惑をかけてしまう」
次上手くいけばきっと自信を取り戻すはずとマリアは思ったのだが、フローラはすっかり意気消沈してしまったようだ。
なんとか元気つけたいマリアは思案する。
「では、ハンカチなどに刺繍をしてプレゼントしてみてはいかがですか?」
クッキーの代わりに刺繍した物をユーリスにプレゼントすれば名誉挽回となるのではないだろうか。
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