仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
肩を落として帰って行く男爵をよそに皇帝は上機嫌だった。
執務室ではいつものように宰相のラウル スペンサー侯爵が一礼し出迎えてくれる。
その横でデスクに向かい忙しくペンを走らせている宰相補佐官である彼、皇帝が弟のように愛してやまないユーリス ヒルト伯爵が顔を上げる。
その姿は漆黒の髪に右の顔半分を覆う白い仮面。
彼こそが皆が噂する氷の仮面の貴公子だ。
「ユーリス、花嫁候補を選んでやったぞ」
「はあ?またですか。いい加減に諦めてくれませんかね」
「まあ、そう言わずに。今回はアトロシカ領アーゲイド男爵家の令嬢 フローラ殿だ」
「だれですかそれ」
胡散臭そうな目をして渋い顔をするユーリス。
さすがのユーリスも国外れの小さな領土のことは知らないようだった。
「貧乏貴族ゆえタウンハウスもないそうだ。だからヒルト家に暫く滞在させる」
「はあ?なにを勝手なことをしてくれてるんですか」
皇帝相手に随分な口の利き方だが子供の頃からの付き合いなのでこれが常だ。
皇帝も気にすることなく、いつものようにふざけくねくねとユーリスに身を寄せ人差し指でつんつんと突いてくる。
執務室ではいつものように宰相のラウル スペンサー侯爵が一礼し出迎えてくれる。
その横でデスクに向かい忙しくペンを走らせている宰相補佐官である彼、皇帝が弟のように愛してやまないユーリス ヒルト伯爵が顔を上げる。
その姿は漆黒の髪に右の顔半分を覆う白い仮面。
彼こそが皆が噂する氷の仮面の貴公子だ。
「ユーリス、花嫁候補を選んでやったぞ」
「はあ?またですか。いい加減に諦めてくれませんかね」
「まあ、そう言わずに。今回はアトロシカ領アーゲイド男爵家の令嬢 フローラ殿だ」
「だれですかそれ」
胡散臭そうな目をして渋い顔をするユーリス。
さすがのユーリスも国外れの小さな領土のことは知らないようだった。
「貧乏貴族ゆえタウンハウスもないそうだ。だからヒルト家に暫く滞在させる」
「はあ?なにを勝手なことをしてくれてるんですか」
皇帝相手に随分な口の利き方だが子供の頃からの付き合いなのでこれが常だ。
皇帝も気にすることなく、いつものようにふざけくねくねとユーリスに身を寄せ人差し指でつんつんと突いてくる。