仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
いつもなら、そっけなく「ああ……」というだけだったのに今日はどうしたことか「ただいま」と言ったのだ。それだけでフローラは嬉しくなって、今なら素直になれるかもとフローラは勢いづいて話し出す。
「ユーリスさま、この間は美味しくないクッキーを出してしまい申し訳ありませんでした」
「いや、それはもう……」
「あの、お詫びにというか、改めてお礼の品をさしあげたくてこれを」
勢い込んで言った後両手でずいっと出されたのは角にビオラの刺繍が施されている白いハンカチ。
ヒルト家の紋章は盾にビオラが描かれている珍しいものでそれを知ってフローラはビオラの花を一生懸命練習したのだがやはりとても上手とは言えない代物だった。なんとなく歪な形のその刺繍をユーリスはじっと見つめる。
「あの、クッキー作りは断念してハンカチに刺繍をしてみたんです。でも私やっぱり不器用で、何度も練習してこの程度なのですが……」
言ってるうちに失敗したとフローラは思った。
ユーリスは真顔でじっとハンカチを見つめている。
きっとこんな出来を渡すのかと思ってるのかもしれない。そう思ったのだが。
「……礼などいいのだが、これは、有難くいただいておく」
ゆっくりとハンカチを受け取ったユーリスはそれを上着のポケットにしまった。
「ユーリスさま、この間は美味しくないクッキーを出してしまい申し訳ありませんでした」
「いや、それはもう……」
「あの、お詫びにというか、改めてお礼の品をさしあげたくてこれを」
勢い込んで言った後両手でずいっと出されたのは角にビオラの刺繍が施されている白いハンカチ。
ヒルト家の紋章は盾にビオラが描かれている珍しいものでそれを知ってフローラはビオラの花を一生懸命練習したのだがやはりとても上手とは言えない代物だった。なんとなく歪な形のその刺繍をユーリスはじっと見つめる。
「あの、クッキー作りは断念してハンカチに刺繍をしてみたんです。でも私やっぱり不器用で、何度も練習してこの程度なのですが……」
言ってるうちに失敗したとフローラは思った。
ユーリスは真顔でじっとハンカチを見つめている。
きっとこんな出来を渡すのかと思ってるのかもしれない。そう思ったのだが。
「……礼などいいのだが、これは、有難くいただいておく」
ゆっくりとハンカチを受け取ったユーリスはそれを上着のポケットにしまった。