仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う

宮殿内のアーゲイド男爵が泊っているゲストルームに皇帝がやってきた。
「失礼する。フローラが来てると聞いたが」
「これは皇帝陛下。わざわざお越し下さりありがとうございます」
出迎えたアーゲイド男爵。その後ろに両手でハンカチを握り締め立ち竦んでいたフローラは目を真っ赤にしている。
父に会って気の緩んだフローラは大泣きをしてマリアが持たせてくれたハンカチはもう涙でぐしゃぐしゃだった。
皇帝陛下の姿を見て止まりかけていた涙がまた溢れてくる。
「皇帝陛下、ごめんなさい私……ごめんなさい」
「謝らなくともよい。大筋はベリルからの手紙で知っている。フローラはなにも悪くないぞ?」
「でも私、ユーリスさまを怒らせてしまいましたぁ」
「よしよし泣くでない」
再び決壊した涙によってフローラはまたもや大泣きし、皇帝はフローラの背中を撫で宥めた。
< 84 / 202 >

この作品をシェア

pagetop