仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
もしや皇帝の住まい後宮にいるのでは?と行ってみたこともある。
「あらユーリス、私にご機嫌伺とは珍しいわね。どういう風の吹き回し?」
「いえ、特に理由は」
マリーベル皇妃への挨拶もそこそこに周りを見渡す。
茶会を開いていた皇妃の側にいるご婦人方や侍女たちの顔を一人一人見る。
しかしその中にフローラの姿は見つけられなかった。
「あら、誰か探しているのかしら?」
「いえ、それでは失礼いたします」
「ユーリス、少し話していかない? ほら、ご婦人方もユーリスに話しかけたくてうずうずしてるわ」
ご婦人たちは扇で顔を隠し興味津々でユーリスを見てはくすくす笑いあっている。
こういう場は苦手なユーリスは顔を引きつらせ足早にその場を後にした。
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