仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
偏見を持つことなく優しい娘に育ってくれたのはうれしい限りなのだが、出来ればいわくつきの彼のところに嫁には出したくないのだ。親心をわかってくれない娘に咎められ父は冷や汗をかく。
「いや、しかし、おまえ、彼は冷徹な上素顔を見た者は恐れおののき失神すると言うぞ?」
「冷徹と言われているのも知っていますが……」
ユーリスの今までの婚約者は皆見た目の恐ろしさだけでなくその冷徹さに逃げていったと聞く。それは怖いと思ったのか、フローラは顔を曇らせ、父はこれできっと断るだろうと期待したのだがそれは一瞬でしかなかった。
「気弱な都会のお嬢様はそうかもしれないけど、私は大丈夫よ。とても優秀で品行方正な方だと聞くし、神童と呼ばれたユーリスさまにとても興味があるわ」
このフローラは田舎で育ったせいかいろんなことに興味を持ち何事も自分で体験してみないと気が収まらない娘であった。
侍女の仕事を手伝ってみたり、庭木の手入れまでするのは日常茶飯事で、森に入り山菜や薬草を取ってきたり、飼っている羊の毛を刈ってみたり、鶏を追いかけまわし捕まえたり、孤児院で子ども達と走り回り、馬も乗りこなしてしまう始末だ。
ときに父でさえハッとするほど凛とした佇まいを見せることもあるのに普段はかなりのお転婆で、普通の令嬢はしないことばかりしてきた。
「おまえは好奇心旺盛というか怖いもの知らずというか。お前の母は奥ゆかしい女性だったというのに」
「え?なんとおっしゃいました?」
「いや、いい。お前が怖い思いをしなければよいのだがな」
「大丈夫よ!これでも度胸はある方です!」
「はあ~」
自信満々の笑みを浮かべる娘に父は諦めのため息をついた。
「いや、しかし、おまえ、彼は冷徹な上素顔を見た者は恐れおののき失神すると言うぞ?」
「冷徹と言われているのも知っていますが……」
ユーリスの今までの婚約者は皆見た目の恐ろしさだけでなくその冷徹さに逃げていったと聞く。それは怖いと思ったのか、フローラは顔を曇らせ、父はこれできっと断るだろうと期待したのだがそれは一瞬でしかなかった。
「気弱な都会のお嬢様はそうかもしれないけど、私は大丈夫よ。とても優秀で品行方正な方だと聞くし、神童と呼ばれたユーリスさまにとても興味があるわ」
このフローラは田舎で育ったせいかいろんなことに興味を持ち何事も自分で体験してみないと気が収まらない娘であった。
侍女の仕事を手伝ってみたり、庭木の手入れまでするのは日常茶飯事で、森に入り山菜や薬草を取ってきたり、飼っている羊の毛を刈ってみたり、鶏を追いかけまわし捕まえたり、孤児院で子ども達と走り回り、馬も乗りこなしてしまう始末だ。
ときに父でさえハッとするほど凛とした佇まいを見せることもあるのに普段はかなりのお転婆で、普通の令嬢はしないことばかりしてきた。
「おまえは好奇心旺盛というか怖いもの知らずというか。お前の母は奥ゆかしい女性だったというのに」
「え?なんとおっしゃいました?」
「いや、いい。お前が怖い思いをしなければよいのだがな」
「大丈夫よ!これでも度胸はある方です!」
「はあ~」
自信満々の笑みを浮かべる娘に父は諦めのため息をついた。