地味同盟~かぐや姫はイケメン達から逃れたい~
「髪を下ろさないのか? 毎日こんな面倒な髪型にするとか酔狂(すいきょう)なやつだ」

「酔狂……」

 そこまで言われることじゃないと思うけれど……。

「纏めておいた方が動くとき楽なんです」

 実際は面倒だし奏に言われているからやっているだけなんだけど、とりあえず適当な答えを口にしておく。


「纏めるだけなら後ろで一つに結えばいいだろう?」

「いやそれは……」


 後ろに一つだとすぐにゴムがずり落ちてきちゃうんだもん。
 無理だよ。

 でもそれを言うとどうしてゴムがずり落ちるのか聞かれちゃうし……。


 って言うか、何であたし如月さんに髪型のこと聞かれてるわけ?

 如月さん、何がしたいの?


 言葉に詰まり疑問に思っていると、突然掴んているおさげを引かれた。

 いや、正確にはそれを結んでいるゴムを。


「え? あ」

 引っ張られて、ゴムが取られたと思った瞬間には髪がハラハラとほどけ始めていた。

 ほどけたのを視認した瞬間あたしは両手で三つ編みを掴む。

 何とか全部ほどけるのは防げたけど、毛先の方は完全にサラサラと揺れていた。


「やはり、綺麗な髪だな……」

 そう言って見上げてくる瞳はキラリと光を帯びていて、何かを確信しているかのように見える。

 知らず、あたしはゴクリと唾を飲み込んだ。
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