地味同盟~かぐや姫はイケメン達から逃れたい~
「お前……どんくさそうな見た目のくせに!」

 子供みたいにムキになった久保くんは本気で捕まえようとしてきた。

「うわっ、ちょっ! こんな狭いところで!」

 机が並ぶ教室の中で本気で暴れようとするとか!
 危ないでしょ!?

 あたしはもう逃げるしかなく教室の外へ出た。


「くぉら! 待ちやがれ!」

 いつも眠そうで気だるげな久保くんの口から出たとは思えないような声が聞こえる。

 見ると、彼は尚もあたしを追ってきた。


「ひぇ!?」

 流石にちょっと怖い。

 ので、本気で逃げた。


 小柄な体を利用して人波をスルスル抜けていく。

「なっ!? どこ行った!?」

 背の高い久保くんに同じ真似は出来ないだろう。

 そうして引き離すうちに完全に()けたみたいだ。


 ホッと一息ついてから、明人くんと勇人くんを置いて来てしまったことに気付く。

 多分今日も一緒に行こうと教室であたしが通るのを待っていたであろう二人。

 いじめの主犯をおびき寄せるエサって意味もあるんだけれど……。

 それ以上に待っていてくれただろう二人を置いて来てしまったことへの罪悪感の方が強い。


 昨日のうちに、双子は良い人だし友達だよねって思っちゃったから尚更。
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