地味同盟~かぐや姫はイケメン達から逃れたい~
保険証も金も自室の中ってんなら病院に連れて行くことも出来ねぇ。
行ってもまあ何とかなるだろうが、本人の意志確認も出来ねぇのに連れてってもなぁ……。
それに、奏……だったか? そういうのはこいつの兄に任せた方がいいだろ。
そして何よりずっとおぶってるわけにもいかねぇってとこだ。
熱は上がってる感じしかしない。
何はともあれいったん横になって休ませた方が良いだろ、と思った。
部屋に入って、何とかおぶったまま靴を脱がせる。
そして奥のベッドまで行くと頭をぶつけない様に慎重に下ろして寝かせた。
布団をかぶせながら、まさかこんな風に部屋に連れ込むことになるとはな、と苦笑する。
こいつを連れ込むのは抱くときだと思ってたからな。
でもま、仕方ねぇか。
いくら何でも苦しそうに呻く病人をどうこうするつもりはない。
「あ、そだ」
ここままじゃ寝にくいだろうと髪も解いてやる。
「って、すげぇ……」
結んであったゴムを取った瞬間、スルスルと勝手にほどけていくさまは凄いとしか言いようがなかった。
こんなにきつく結っていたってのに全くクセが付いてない。
指を通すと、引っかかる様子もなくサラサラと勝手に手の中から滑り落ちていく。