地味同盟~かぐや姫はイケメン達から逃れたい~
「キレイ、だな……」

 純粋にそう思った。

 触り心地が良くて何度か()いていると、「んんぅ……」と美来が眉を寄せた。


「おっと、いけね」

 ちゃんと看病してやらねぇとな。

 その前に眼鏡も取ってやるか。


 美来の眼鏡に手を掛けながらそういえば、と思い返す。


 最初八神さんのところに連れて行ったとき、こいつ眼鏡取られるの頑なに拒否してたな。

 なんでだ? そこまでブサイクって感じはしねぇけど……?


 そう思って眼鏡を取り、理解する。

 眼鏡を取りたがらなかったのは、真逆の理由だったってことを。



「っ!」

 息を呑み、その素顔を凝視(ぎょうし)する。

 ブサイクどころか可愛い。

 可愛いと綺麗という言葉がどっちも当てはまるような顔。


 信じられない気分で見続けていると、その繊細なまつ毛がフルリと震える。

 ゆっくりと瞼が上げられ、薄い色の瞳が現れた。


「……ん……奏?」

 熱に浮かされてちゃんとした判断が出来ないのか、その可憐な唇は兄の名前を呼んだ。

「……いつも、ありがとねー……」

 そうして微笑んだ美来に、俺は心臓をわし掴まれる。

 美来はそのまま目を閉じ、また規則的な寝息を立て始めた。
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