地味同盟~かぐや姫はイケメン達から逃れたい~
 そうしてトイレの前に連れてきてもらった奏は、少し冷気を漂わせていた。

 あ、ヤバ。
 ちょっと怒ってる?


「……コンタクト、落としたんだって?」

 ヒヤッとする低温な声。

 それだけですでに叱られているような気分になる。


「あ、うん」

「代わりのコンタクトは?」

「……持ってきてない」

 あたしが使っているのは2ウィーク用のカラコンだから、寮には代わりのものがある。

 でもまさか出先でこんなことになるとは思わなかったから持ち歩いてはいなかった。


「はぁ……仕方ない。とりあえず、そのままだとオッドアイみたいで余計目立つからもう片方も取っておけよ?」

 諦めの入ったため息の後の指示に、あたしは「分かった」と従う。


 コンタクトを取って眼鏡を掛けなおす。

 薄いとはいえ色付きだからこれで目の色は目立たないと思うけど……。


「マシになったけど……でも今日はもう帰った方が良さそうだな」

「……だよね」

 ショボーンと落ち込む。

 もっと遊びたかったな……。


「あ、あのさ」

 話がひと段落したのを見計らってか、今まで黙って見ていたしのぶが少し緊張した様子で声をかけてきた。
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