地味同盟~かぐや姫はイケメン達から逃れたい~

「急いでるっつってたけど、追われてんのか? それで変装?」

「はい、そんな感じです」

 今度はほぼほぼその通りなので迷いなく答える。


「ふーん……」

 すると彼はまたあたしをジッと見下ろした。


 うーん。

 あたし、もう行って良いかな?


 どう切り出そうかと迷っていると、突然彼があたしの手を掴んだ。

「え?」

「服変えてぇんだろ? ついて来いよ」

 そう言って手を引かれる。


「え? ちょっ、ええー?」

 問答無用で手を引かれて、ちょっと前の久保くんみたいな人だなって思った。


 でも、とりあえずは悪いことをされるようにも思えなかったし、あたしは引かれるまま付いて行った。

 あたしを探す人たちの声もどんどん離れていき、少しホッとする。


 そうして連れて行かれた先にあったのはアパレルショップだった。

 ちょっと派手目な若者が好きそうな店で、あたしの好みじゃなかったけれど。


「ここ、知り合いの店だから。適当なの選べよ」

 でも一応親切で連れてきてくれたんだろう。

 それに好みじゃなくても丁度良さそうなものもあるかもしれない。

「あの、ありがとうございます」

 だからお礼を言ったけれど、彼は意味深な笑みを浮かべるだけだった。
< 269 / 878 >

この作品をシェア

pagetop