地味同盟~かぐや姫はイケメン達から逃れたい~
 稲垣さんは存在感がないのでよく分からない人だけれど、銀星さんとやり合えてるくらいには強い。

 どちらも決定打を出せない感じだ。


 でも、やっぱり銀星さんの方が強いのか稲垣さんは少し押されていた。


 この状況、どうすれば……。


 何も出来ないうちにお巡りさんが来てしまうかな?
 そうなったら色々聞かれて困るんだけど……。


 でもそんな心配は杞憂(きゆう)に終わる。

 銀星さんと稲垣さんの間に、第三者が現れたから。


「お前らそこまでっ」

 その人には見覚えがある。

 黒髪に、前髪の一部を赤く染めている細身の男性。
 数時間前に会ったばかりなんだから忘れるわけがない。

 南校の“暴走族”の副総長。

 西木戸さんと呼ばれていた彼だった。


 でもどうしてあの人が?


 疑問が浮かび、ある可能性が頭の中にひらめく。

 まさか……。


 西木戸さんが現れたことで二人のケンカは止まる。

 彼は銀星さんの方を見て、呆れを含ませた不満顔を見せた。


「おい銀星、探してたんだぞ? 今日はちょっと話があるって言っただろ? 何遊んでんだよ?」

「あー? そうだっけ?」

 対する銀星さんは悪びれもなく忘れていたと話す。
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