地味同盟~かぐや姫はイケメン達から逃れたい~
『おい、久保と森双子、聞こえるか?』

「も、森双子!?」
「え? かなちゃんだよな?」

 森双子なんて乱暴な呼び方をされたことが無かったのか、二人は驚愕の声を上げる。
 奏の声もいつもより少し低いし、尚更別人のように思うのかもしれない。


 奏、やっぱり怒ってるかな?

 電話越しだとハッキリしないけど、この声は不機嫌な時の声だ。


『そうだよ。ったく……面倒なことになりそうだけど、こうなったらお前らも共犯だ。他の奴にバレないように美来を連れてお前らも来い』

 もはや命令形。

 勇人くんと明人くんはあんぐりと口を開けてスマホ画面を凝視していた。


 あまり接点のない久保くんはどう思うんだろう?

 そう思ってさっきから黙っている久保くんを少し振り返って見る。


 彼はどうしてか苦虫を嚙みつぶしたような顔をしていた。

 何か思うところがあるみたいだけれど、それが何なのかはあたしには分からない。


 あまり関りがないと思っていたけれど、奏と久保くんで何かあったのかもしれない。

 そう言えば今朝寮で会った時も様子がおかしかったな、と思い起こしていると、奏の声があたしを呼んだ。


『あと美来。全部話してもらうからな? 今日のことも、《かぐや姫》のことも』

「っ!?」

 不機嫌さは軽くなったけれど、しっかりした声音。
 それは、絶対に誤魔化しは許さないという意図が込められていた。


「……うん、分かった」

 二年前のこと。
 あたしが思い出したくなかったのを汲み取ってくれていたのか、今まで詳しく聞いて来ることが無かった奏。

 でも、こうなったからには話さないわけにはいかないだろう。

 あたしは覚悟を決めて返事をすると、「じゃあ後で」と言って通話を切った。
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