地味同盟~かぐや姫はイケメン達から逃れたい~
 差し出した書類を見せるとすぐに受け取ってくれる。

「じゃあ、失礼しました」

 だからすぐにそう言って去ろうとしたんだけど……。


「まあ待てよ」

 と手首を掴まれて引き留められてしまった。


「えっと……あたし他にも用事があるので急いでるんですけど……」

 言いながら見た八神さんの顔には疲れが見えた。

 なんて言うか、あたしをどうこうしたくて引き留めたって感じはしない。


 二年前に比べると優しくなった八神さんだけれど、基本的には強気な人だ。

 それがこんなに疲れた表情をしてるなんて……。


 何があったのかな?
 さっき言い合いしてたのと関係あるの?

 そんな疑問を抱いてしまったからか、疲れの見える彼を無下(むげ)に出来なかったからか。

 手首を掴む腕を無理に振り払おうとはしなかった。


「そんなに時間取らせねぇから、ちょっとグチくらい聞いていけ」

「はぁ……」


 グチって……。
 なんでまたあたしに?


 首を傾げているうちに、手首を離した八神さんは椅子を用意して缶コーヒーまで持ってきてくれた。

 ここまでされたら何も聞かずに出ていくのも失礼な気がする。


「じゃあ、少しだけなら……」

 そう言って椅子に座った。
< 345 / 878 >

この作品をシェア

pagetop