地味同盟~かぐや姫はイケメン達から逃れたい~
 渡された缶コーヒーはミルクと砂糖入りのもの。

 八神さんはブラックコーヒーだった。


 うん、イメージピッタリすぎる。


 足を組んでブラック缶コーヒーを飲み、気だるげにため息をつく。

 見た目は良いから本当に様になっていた。


 それこそモデルとかが缶コーヒーのCMにでも出てるみたいなワンシーンに、あたしは少し見惚れてしまう。

「……飲まねぇの?」

「え? あ、飲みます」

 聞かれて慌てて缶のタブを開けた。


 口の中に広がる甘さにホッとする。

 あたし、自分が思っていたよりも疲れていたのかも知れない。


 まさか八神さんはそれに気付いてあたしを引き留めたとか?

「……」

 いや、それはないか。

 でも本能的に察知したとかならありそう。


 八神さんってなんて言うか……野獣って感じがするし。


「……最近な、《月帝》の奴ら荒れてんだよ」

 黙って缶コーヒーを飲んでいたら、ポツリと呟くようにグチがはじまった。

「そう、みたいですね」

 あたしはさっき出て行った人たちの表情を思い出しながら返事をする。

 絡まれはしなかったけど、親の仇でも見るような目で見られた。


「この間お前を襲った下っ端が退学になっただろ? そのせいで《星劉》の連中が勢いづいて《月帝》の奴らを下に見てんだよ」

「へぇー……え?」
< 346 / 878 >

この作品をシェア

pagetop