地味同盟~かぐや姫はイケメン達から逃れたい~
「まあ、話はそれだけだ。それ飲み終わったら行っていいからな」

「……はい」


 やっぱり八神さんって、結構優しい。

 二年前の印象と違い過ぎて戸惑ってしまうけど、これが今の八神さんなんだって受け止めないとね。

 人は成長するし、過去は過去なんだし。


 それに、八神さんは二年前のこと謝ってくれたし……。


 それでも一番大事なファーストキスを奪われたから、まだ恨めしい気持ちはあるけれど。



 そんなことを考えながら缶コーヒーを飲んでいると、八神さんがふと思い出したように「そう言えば」と話し出した。

「この間街でな、《かぐや姫》に会ったんだ」

「ぐふっ!」

 突然の話題にむせかける。


 なんでそれをあたしに話すの!?

 まさかバレて……?


 いくら優しくなった八神さんとはいえ、あたしが《かぐや姫》だとバレたらどうなるか分からない。


 だましてたのか? って思われるかもしれないし、今度こそ俺のものにするとか言われたらたまったものじゃない。

 あたしは平穏な学生生活を送りたいのに、少なくとも八神さんが卒業するまで彼から逃げ続ける学生生活になってしまう。


 やっぱりバレるのだけはダメだ!


 そう決意して、感情が出やすいって言われる顔をあまり見せない様に下を見る。
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