地味同盟~かぐや姫はイケメン達から逃れたい~
 とにかく今は逃げるしかない!

 そうして驚きで目を見開いている稲垣さんをもう一度だけ見て、あたしは何も言葉に出来ず足を動かした。


 稲垣さんは追ってこない。

 途中で第一寮へ向かいしのぶと別れ、何とか学校の敷地外に出る。

 その頃には何とか()くことは出来た様で、騒がしさは少し遠くに聞こえていた。


 それでも学校の近くにいるわけにも行かないので、あたし達は第二学生寮へと急いだ。


「はぁ……はぁ……」

 寮の自分達の部屋の前まで来ると二人で息を整える。

 自分の部屋の鍵を開けながら、あたしは奏に聞いた。


「はぁ……稲垣さん、黙っててくれるかな?」

「はぁ……はぁ……無理、だろうな……」

「……だよね」

 奏の返事に、諦めの心境で同意する。


 何となく二人の総長にもバレそうな感じはしていたけれど、まだ余裕はあったはず。

 でもきっと、その余裕は無くなってしまった。


「奏……明日学校行かなきゃダメかな?」

「諦めろ。どうせそのうちバレてた」

 ちょっと投げやりにも聞こえる言葉にムッとする。


「なにそれ。大体あの地味な格好は奏のためにやってたんでしょう?」

「お前なぁ……」

 文句を言うと、ジトリとした目で淡々と語られた。
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