地味同盟~かぐや姫はイケメン達から逃れたい~
「泉の中にたたずんで歌っていた……湯煙の中……神秘的で、美しくて……」

「ぎ、銀星?」

 あまりにも銀星らしくない様子にひたすら戸惑う。


 何だ?
 これ本当に銀星か?

「お、おい銀星? 大丈夫か? のぼせたんじゃないか?」

「のぼせた? ああ……そうかもしれないな。俺は彼女に――俺の女神にのぼせ上ってる状態なんだろうな……」

「いや、マジで大丈夫か?」


 ツッコミにも反応は薄く、本格的にヤバイと思い始める。

 これは温泉にあてられたな。
 それ以外に考えられない。

「お前どれだけ入ってたんだ? とりあえず上がろうぜ。のぼせて頭おかしくなってんだろ?」

 俺は入ったばかりだったが仕方なく銀星に付き合って早々に上がった。

 念のため部屋まで付き添って「もう今日は寝とけ」と布団に押し込んだ。


 銀星の様子のおかしさにちょっと本気で心配したが、流石に明日になれば戻ってるだろう。

 そう思った俺の考えは、甘かった……。

***

「すごい……」

 腕を振るった朝食に、食べ始める前から目を輝かせてくれる美来ちゃん。

 あーもー既に嬉しい。


 昨日は和食だったから今日は洋食にしてみた。
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