地味同盟~かぐや姫はイケメン達から逃れたい~
「美来……?」
「……ごめん。嘘はつきたくないけど、今回みたいに誰かが傷つくって分かってる状況だとどうなるかは分からないよ」

 真っ直ぐ見上げて伝える。

 一昨日、遥華の手を振り払うことは出来た。
 奏に電話して知らせることも出来た。

 でも、それをしたら遥華は確実に傷ついただろう。
 それにもっと仲良くなりたいと思ったばかりだったから、あたしの方からその手を離すようなことは出来なかった。

 だから、安易に了解は出来ない。


「……」

 軽く睨むように見下ろされたけれど、こればかりは奏が怒ると分かっていても譲れない。

 それに……。


「はあぁぁぁ……。分かったよ、そこまで頑固になってるってことは絶対に譲れないことなんだな?」

「うん、そうだよ。……ありがとう」

 さっきよりも盛大に吐いたため息の後で奏が折れてくれる。
 なんだかんだ言って、あたしの意志は尊重してくれるんだよね。

 そこに甘えちゃうのは良くないとは思うけれど、ちゃんとあたしを分かってくれている兄には感謝しなくちゃね。


「でも嘘つかれるのは困るから、相談はしてくれ。頭ごなしに止めろって言わないようにするから」
「うん、努力する」

 状況によってはどうなるか分からないから、ハッキリ“うん”とは言えなかった。
 でも譲歩してくれた奏には応えたかったから、そう返事をする。
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