地味同盟~かぐや姫はイケメン達から逃れたい~
「じゃあテスト明けすぐに忙しくなって申し訳ないけれど、みんなよろしく頼むよ」

 最後に坂本先輩がそう締めくくって今日の仕事は終わる。


 あたしはみんなが帰り支度をする中、さっき言っていた草案を作るため居残りするという高志くんに近づいた。

「お疲れ様。本当に坂本先輩と二人だけで大丈夫? あたしも少しは何か手伝おうか?」

「美来さん、さっきも言ったが大丈夫だ。大変ではあるけれどキャパオーバーというほどでもないからな」

 答える高志くんはやっぱりいつもより明るい感じに見える。

「そう?」

 と返してみたけれどちょっと心配だ。

 ワーカーズハイみたいになってるんじゃないかと思ってしまう。


 ワーカーズハイっていうのはハードワークをこなした達成感などで気分が高揚している状態のこと。

 必ずしも悪いことって訳じゃ無いけれど、あまり無理をするのは良くない。

 今はハードワークをこなす前のはずだし、ワーカーズハイとはちょっと違うのかもしれないけれど……。

「……でも、体調には気を付けてね?」

 心配するあたしに高志くんは改めて視線を寄越した。

 その彼の表情がフッと緩む。

 優しそうに細められた眼差しで「ありがとう」とお礼を言われた。
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