地味同盟~かぐや姫はイケメン達から逃れたい~

会いたくなかった男

「な、んで……あんたが……」

 やっとのことで絞り出した言葉に、橋場は笑って答える。

「なんで? ははっ……つれねぇなぁ。お前があの街からいなくなって随分探したんだぜ?」

「そうそう、全く苦労したぜ。奏の野郎、徹底的に転校場所秘密にしてたからなぁ」

 橋場に引き続き他の二人もシーツを取りニヤニヤ笑っている。
 こいつらにも見覚えがある。
 黒髪のチャラそうな男と、茶髪のちょっと頼りなさそうなタイプの男。
 いつも橋場にくっついている奴らだ。

「やっとのことでこの街にいることだけは分かったけど、住んでる場所までは分からなかったんだぜ?」

 でも、と彼らは稲垣さんを見る。

「コイツが声掛けて来てくれてなぁ。美来に引き合わせてくれるって言ってきたんだよ」

「っ!」

 三人の話に、あたしも稲垣さんを見る。
 どうして? という言葉は口にせずとも伝わったみたいだ。


「そんなに驚くことか? さっきも言っただろう? 君がいなくなればいいって。彼らに連れ去ってもらうのが一番だろう?」

 稲垣さんは当然のことの様に橋場達に出会えて良かった、と続ける。

「彼らは君を連れ帰りたいみたいだったからな。利害の一致さ」

 あたしを隠して八神さんと如月さんを争わせたい稲垣さん。
 あたしに執着していて、連れ帰りたい橋場。

 確かに稲垣さんの言う通りだろう。
< 784 / 878 >

この作品をシェア

pagetop