地味同盟~かぐや姫はイケメン達から逃れたい~
 そうして注文の後料理が来るのを待っていると、また久保くんに腕を引かれた。

「何やってんだ? 上行くぞ」

「え? でも料理がまだ……」

 受け取り口の方と久保くんを交互に見てそう言うと、勇人くんが説明してくれる。


「二階席で食べる人には、二階に直接運んでくれるんだ」

「そうなの?」

 流石VIP仕様。


 感心しながら引かれるままに階段を上り始めると、近くにいた人達が途端にザワリと騒がしくなった。

 それは波が起こったかのようにどんどん広がっていく。

 予想していたとはいえ、この規模の人数だとちょっと……いや、かなり恐怖だ。


 騒然とし過ぎて何を言っているのかも分からない。

 でも悪いことしか言われていないだろうってことだけは確実で……。


 ブルリ、と無意識に(おのの)いた。


 あたしの腕を掴んでいた久保くんがそれに気付いて少し振り返る。

「何お前、怖がってんの?」

 面白そうに言う顔にイラっとした。


「当たり前でしょう? あんな大勢に敵意向けられて怖がらない方がおかしいよ」

「あんなんひと睨みしときゃあ黙るだろ」

「久保くんと一緒にしないで頂戴」

 そんなやり取りの間に明人くんが「久保は役に立たねぇからな」と割り込んできた。
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