望月先生は甘くない ~年下ドクターの策略~
「柚葉さん、ちょろすぎ。こんなんじゃ。騙されますよ。婚活」
クスリと笑いながら望月先生は私の上から退くと、ベッドサイドに腰かけた。
「なっ!」
からかわれたとわかると同時に、羞恥で今なら軽く死ねそうな気がした。
こんなことをいうような子だったことにもはや開いた口がふさがらず、私があわあわしていると、望月先生はいつもの病院で見せる笑顔を浮かべた。
「そういえば昨日迷惑かけたんですよね。すみません」
またあのキュルンという効果音が聞こえそうで、眩暈を覚える。
「ねえ? どっちが本当よ?」
頭痛がして頭を押えながら尋ねれば、望月先生の綺麗な唇が弧を描く。
「柚葉さん朝食行きましょ。僕、お腹ペコペコなんです」
まったく私の話など聞いていないようで、いつのまにかきちんと掛けられていた昨日着ていたシャツを身に着ける。
私が眠った後に、わざわざ脱いでかけてまた眠ったということだろう。
その用意周到さにもはや何もいえなかった。