望月先生は甘くない ~年下ドクターの策略~
「それでは失礼します」
彼の家は同じ場所なのだから、この場で別れるのが正解だろうと思っていた私はクルリと踵を返した。
「待て! 本気か?」
え? 後ろからいきなり手を引かれ私は驚いて振り返った。本気とはどういう意味だろう。
「家に行きたいとか言わないのか?」
「え?!」
家に行く? それはもしかしなくても夜の誘いだろうか。こうして出会ったらすぐにそう言う行為に及ぶのが当たり前なのだろうか?
ただ契約のような結婚かもしれないが、でも……。
いきなりこの人と身体を重ねるなど到底想像ができない私は、ごくりと唾液を飲み込んだ。
「あの、きちんと結婚するまでは、そんなご自宅なんて……。あの、失礼します」
後ろから止める声が聞こえたが、私はちょうど来たエレベーターに乗り込んだ。