望月先生は甘くない ~年下ドクターの策略~

それ以降、何度か連絡をしたが着信拒否でもされたのだろう。
連絡がつくことはなかった。そして風の噂で彼が結婚をしたことを知った。
職場のみんなには、長く付き合っている彼がいることだけを話していた。
『俺たちのことは同業者も多いから内緒な』

そんな言葉をバカみたいに真面目に守っていた自分が滑稽だった。ただ知られたくなかっただけなのに。

他の病院で同業者であれば、学会や、緊急の呼び出しなどと言えば、納得もするし疑われないことが解っていたのだろう。
私自身、全くと言っていいほど疑っていなかった。
しかし、後になって思えば、会っていたのは多くて月に一度、下手したら2か月会わないことなどしょっちゅうだった。
大人すぎる彼に、悩みを打ち明けることなどできなかったし、甘えることもできず、いつも緊張していた気もする。
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