きみと真夜中をぬけて
夕方の空気は嫌いではなかった。
朝ほどの眩しさもなく、夜ほどの冷たさもない。慣れ親しんだ深夜の公園とはそうそう離れられないもので、綺が来れなくなってからも私はひとりでここに来ている。
つまるところ、私は1日に2回、公園を訪れていることになる。大好きかよ、と我ながら心の中で苦笑した。
「ところで蘭、目が赤いな。泣いた?」
相変わらず見ているな、と思った。
隠すつもりはさらさらなかった。小さく頷けば、「そっか、よしよし」と頭を撫でられる。
聞かれなかったら何も言わないつもりだったけれど、綺はきっと気付いてくれるとも、内心少し期待していたのだと思う。髪を優しく撫でるその手に、心が和らいでいく。
綺は何も催促はしない。蘭が話せそうなら、話したいなら、可能な限り教えて。綺の瞳が、そう言っている。
いつだって綺と話すときには、沈黙にさえ安心感があった。