きみと真夜中をぬけて
「……今朝、早く目が覚めてね」
「うん」
「なんとなく……、本当に、ほとんど無意識でね」
「うん」
「…リビングの引き出し、あけた」
「リビング……あ、手紙、入ってるとこ?」
「…うん、そう。1通だけ……、最初に貰ったやつ、読んだの」
ぽつりぽつりと頼りなく言葉を紡ぐ私の声を、綺はちゃんと拾ってくれる。
リビングの引き出しに保管されている手紙のことを話したのは、まだ梅雨が始まるか始まらないかの時期のことだった。
私が過去に話した内容を覚えていてくれたことを感じ、胸がぎゅっとなる。
今日の早朝の出来事、それから手紙に書かれていた内容を話すと、すべて聞き終えたあとに綺はひとことだけ、「がんばったじゃん」と声を落とした。
泣き出してしまいそうになる気持ちを抑え、「だよね」と掠れた声で返す。