きみと真夜中をぬけて
バイト先に桜井くんが入ってきたことは、果たして友達に言わなければならないことだったのか。
聞かれたら答えた。
けれど聞かれなかった。
だから答えなかった。
それのなにがダメだったのか、私はその瞬間もまだ、理解できずにいた。
マイがいつだったか、「桜井くん、なんか良いよね」と言っていた記憶は確かにあるけれど、仲良くなった当初から男の子をとっかえひっかえして遊んでいるイメージだったから、桜井くんのこともその流れで一時の遊びのようなものだと思って気に留めていなかった。
「もう、あたしら 蘭とは友達やめるから」
友達って、「やめる」というひとことでやめることができるらしい。
冷たい視線と安っぽい言葉に、頭の片隅で こんなもんか、と思った。