きみと真夜中をぬけて
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「蘭、あんたは大丈夫」
「名生 蘭。私はえらい えらいよ、すごく だから大丈夫」
「世界が私に適応していなかっただけだから」
「だからきっと、明日も大丈夫」
自分に言い聞かせるだけのひとりごと。夜の風を浴びながら、私は私を励ましている。
夜だけは、私は私のことを許してあげられる。認めてあげられる。名生 蘭という、死ぬまでやめられない人生わたしのことを肯定してあげられる。
1年以上、私はそうやって自我を保っている。
不登校になったのは高校2年生の4月。それから1年と2か月、私は一度も学校には行っていない。
日中、母が仕事に行っている間は、部屋にこもって読書をし、その感想文を書いた。
誰に見せるわけでもない。
ただ、本を読み、それに感じたことを書きとめることが、学校に行かない私にとっての学習のようなものだと自分で思っていた。