きみと真夜中をぬけて






「───え、文化祭?」




8月中旬、昼下がり。


家から歩いて数分のところにある公共図書館で落ち合わせた私に、杏未は首をこてんとかしげて可愛らしく言った。



一般的に高校3年生というのはとても大事な時期。


杏未は隣の県の大学から推薦枠で受験するらしく、勉強時代はさほど大変ではないが面接練習などで、夏休みも学校に行く機会が多いと言っていた。



そんな中で時間を合わせて私に会いに来てくれている。週に1回程度会うように提案してくれたのは杏未だった。

「蘭ちゃんとの時間、大切にしたいから」と照れくさそうに言うから、私までつられて照れくさくなった。




夏休みということもあり、図書館の中は学生の姿が多く見られた。


しかしながら、同じ高校に進学した同級生は私と杏未しかいないということもあり、中学校の学区内にある図書館を利用する人の中に、記憶にあるクラスメイトや知り合いの姿は確認できなかった。



< 149 / 273 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop