きみと真夜中をぬけて
カフェのバイトはやめた。
桜井くんは何も連絡してこなかったけれど、それを不思議だとも思わなかった。
私たちは本当に、ただのバイト仲間でしかなかったからだ。桜井くんだって、まさか私とマイたちのいざこざに自分が関係しているなんて思うはずもない。
ラインは消した。必要なかったからだ。母とは電話でやりとりをしているし、中学の同級生とだって連絡を取り合う機会は減っていたから支障はないと判断した。
手持ちのSNSはリアルとのつながりを遮断し、適当なハンドルネームで登録し、好きな芸能人の投稿を見るためだけに使っている。
学校に行かなくなったことを機に、私はいろいろなものを手離した。要らなかった。感情を揺さぶるものは、もう何も欲しくなかった。
青春などというものは、もう私とはかけ離れたところにある。
遥か彼方、私ひとりじゃ、もう見つけることすら出来ない。