きみと真夜中をぬけて







「なあー、蘭」

「うん」

「今日元気ない日じゃん」

「……うーん。よく気づくね、ホント」

「蘭がわかりやすすぎるってのもあるけど」

「そうかぁ」

「そうだぁ」




容赦なく太陽が照り付ける空の下───ではなく、冷房がよく効いたコンビニのイートインスペースで、私と綺はアイスを食べながらそんな会話をしていた。



時刻は20時を過ぎたところ。


夏になり、2週間前からコンビニのイートインスペースを利用するようになった。


住宅街のはずれにあるコンビニにイートインスペースが設けられている方がもはやレア。利用者は、比較的夜の始まりの20時(このじかん)でもそうそういない。


真夜中さんの出勤は基本的に21時らしく、それまでシフトが組まれている女性の店員さんは、この2週間ですっかり私と綺の顔を覚えたようで、目が合うと軽く会釈をするようになった。




イートインスペースでアイスを食べ、小1時間ほど喋る男女。


おまけに深夜バイター真夜中さんと親しく話していると来たら、何者かと思うのは当然のことで、女性店員さんの記憶に残るのも仕方ない。



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