きみと真夜中をぬけて






星を見上げる横顔が綺麗だった。幸せそうだった。綺をこんなにも幸せで包み込む空を、綺の隣で見れてよかった。



ぎゅっと手を握り返すと、また笑われた。むっと眉を寄せると、開いた手で額をつつかれる。悪戯っぽく笑う顔が印象的だった。



「……あのね、綺」

「うん?」

「……杏未にね、文化祭に、誘われたんだ」



ぽつり、ぽつりと言葉を紡ぐ。

いつだって私は、綺に話を聞いて欲しくて仕方がない。


けれど今日は、情けないほどに弱弱しいそれを 満天の星空に響かせることに、少し気が引けた。


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