きみと真夜中をぬけて
「蘭ちゃん、こっちこっち!」
制服を着た杏未が、私を見つけてブンブンと手を振っている。その姿をとらえ、私も小さく手を挙げた。
9月上旬───綺の高校の文化祭、当日。
学校の最寄り駅で待ち合わせをし、昼前に私たちは落ち合った。
「お、お待たせ」
「ううん!てか蘭ちゃん、やっぱ身長伸びたよね?スカート何回折ってる?」
「あ、2回…」
「え、だよねぇ?わたし3回でこれだよぉ。目線違うの、気のせいだと思いたかったぁ」
「……杏未は縮んだ感じ?」
「あはっ、蘭ちゃんそれ禁句!」
今朝の話。
ワイシャツの袖を3回ほど捲り、ボタンは一番上だけ開ける。ネクタイを結ぶのは実に1年半ぶり。
スカートは2回折っただけで膝上10cmになったから、あの頃に比べて身長が伸びたのかもしれないなーと、等身鏡にうつる自分の姿を見て思ったのだ。
杏未と並んで歩く機会が増え、共に学校に行っていた頃より目線の高さに差異がある気がしていたけれど、気のせいではなかったようだ。
ろくに太陽の光も浴びずに長い時間を過ごしていたのに、そんなことお構いなしにまだまだ私も育ち盛りなんだなぁと、そんなことを思ってなんだか笑えた。