きみと真夜中をぬけて
「大学入ってからは身体の調子も良いんですって」
「……ふうん」
それは、やえの心に寄り添える人がそばにいるからだろうか。
やえに余計な不安や心配を与えないほどやえのことを1番に考えてくれる人を見つけたから、心が穏やかなのだろうか。
ばったり会ってしまったら、俺は何をどう謝っていいかわからない。
5年前で、俺の中で情報が止まっているのだ。
俺はやえを救えなかった。最後まで優しくできなかった。誰かに心配されてばかりいるやえのことを羨ましいとすら思っていた。
俺はそういうやつだ。
母がやえと遭遇したという話を聞いてから、動悸がおさまらない。どうにもできない後悔に押しつぶされてしまいそうだった。