きみと真夜中をぬけて
先日杏未に「冬休み、蘭ちゃんのお誕生日お祝いさせてねっ」と予告され、母以外にも祝ってもらえるんだ……と喜びを嚙みしめたばかりだった。
まさか、綺に覚えてもらえているなんて。
「あ。その顔、俺が誕生日覚えてるとは思ってなかったって顔だ」
「え、いや…びっくりして」
「好きな人の誕生日忘れるわけないじゃん。この俺だぞ」
自信満々に言われ、恥ずかしいのに否定できなかった。
綺なら普通にあり得ることだからだ。人の話を目を見てちゃんと聞いてくれる人だって重々分かっているからこそ、綺の発言を否定することができない。
なにより、時々不意打ちで挟んでくる「好きな人」というワードに、どうしても動揺してしまう。
私は綺の好きな人。恋をしてくれている。
その事実を忘れる暇もないスパンで伝えてくれるから、それがとても嬉しくて、照れくさい。
だけどでも、だからこそ綺にとっての恋の定義が気になった。