きみと真夜中をぬけて
「……ぶはっ」
少しの沈黙の後、それを破るように綺の笑い声がした。肩を揺らして笑っている。
「……そんな笑う?面白いこと言ってないよ」
「いや?両想いだなと思って」
「それは、まあ……」
「恋ってラブなんだよな。なんかさ、俺と蘭は、ラブって感じがする。ラブな関係」
「だいぶ意味わかんないよ……」
「あは、そう?」
「私の世界、綺と出会ってからずっとひっくり返ってる気がする」
「それもだいぶ意味わかんねーって」
私と綺はラブ。
意味わかんないけど、それくらいが丁度良いのかもしれない。そんな曖昧で漠然とした関係が、私たちによく似合っている気がした。
「てか蘭、誕生日、暇だったら天体観測行きたい」
「暇じゃないけど、いいよ」
「ツンデレか」
「日中は杏未と予定があるから暇じゃないもん」
「そうやって友達いるアピールするんだ、へえ、ふーん、そう」
「てか寒い。真夜中さんのところ行ってあったまろう」
「肉まん半分こしようぜ」
「私ピザまん派なんだけど」
「まじでぇ?しゃーない、真夜中さんと半分こするわ」
「勤務中だよ真夜中さん。てか食べるとしても普通に1個食べると思うあの人は」
「言えてる」
冬の終わり。空気が澄んだ、真っ白な夜のこと。