きみと真夜中をぬけて
ここが、私の居場所だ。誰にも迷惑をかけずに、私は私と向き合うことができる。
名生 蘭。あんたは、私は、絶対大丈夫。学校という箱の中に捕らわれて学びを得るより、読書をして感想文を書いている方がきっと素敵な感性が磨かれる。だから大丈夫。この夜を越えて、また朝が来ても、貴方は大丈夫だからね。
そうやって自分を認めてあげることで、私はこの1年を生き繋いできた。
だけどその事実は、出会って間もない綺に───私を知らない人にいうことではない。
綺にとっての私のイメージは、深夜徘徊不良少女のままでいい。人は脆く呆気ない。同情することと関係を断つことは、同じくらい一瞬だ。
「私のことはいいから。綺は、綺の話を聞いてほしいんでしょ」
――俺を知らない人と、俺の話がしたいんだ
きみが言ったその日本語を、私は理解できないままでいる。ちょっとめんどくさそうな綺に捕まったから、まあいいか、と頷いただけ。
綺は、私とはどうも感覚が違う。
けれど、綺がそう思う理由には、少しだけ興味があった。