きみと真夜中をぬけて





名生蘭は不登校になった。


人間関係がこじれ、居場所を失ったという噂を聞いたけれど、原因が何だったのか、俺は未だに知らない。


佐藤や菊池と何か揉めたことは確かのように思えるが、噂ではそこまでの情報がまわってこなかった。



バイトを通して連絡先を知っていたから連絡しようか迷ったけれど、俺と彼女は仲が良いと言えるほどの関係ではなく、しいて言うならたまたま同じ学校に通うバイト仲間というだけだったので、殻に閉じこもってしまった彼女に踏み込む勇気がなかった。



何もできないまま、容赦なく時間だけが過ぎ去り、彼女が不登校になってから1年以上が経過し、佐藤たちの口から彼女の悪口に思える言葉を聞く機会も減った。


藤原さんは徐々に佐藤たちと距離を取りはじめ、すっかり一緒にいるところを見なくなった。



こうして人は変化に対応していくのだと思う。

俺も、彼女のことを好きだという気持ちがだんだんと薄れ、ふとした時に 元気にしているだろうかと(ふけ)る程度になった。




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