きみと真夜中をぬけて
「蘭は、星とか空とか、好き?」
唐突な質問だった。隣に座る綺をちらりと見つめると、彼はぼんやりと空を見上げていた。
綺のことなんか何も知らないのに、その表情がどうしようもなく優しさで愛おしさであふれていて、綺は星や空が好きなんだろうなぁということだけはなんとなく感じた。
「蘭?聞いてる?」
「…あ、うん。ごめん聞いてた」
質問に答えることすら忘れてその横顔を見つめてしまっていて、顔を覗き込まれる。
ふいっと視線を逸らし、先ほどの綺と同じように夜空を見つめる。
雨が降った日の空に星が見える日はほとんどない。
意識的に星空を見上げたことはないけれど、思い返せばこの公園で星が綺麗に見える日は、きまって日中の天気が良い日だった。