きみと真夜中をぬけて
人生たるもの、進む道は人それぞれである。
立ち止まったままの人生を送ろうが、学校に行こうが、毎日平等に夜が来る。
その事実だけは、生きてる限り これから先も絶対に変わらない。
どんな夜を過ごそうと────生きてさえいれば。
コンビニを出て、家までの道のりを歩く。
繋がれた右手からは、綺の体温が伝わってくる。人の体温にしては比較的低めのそれが、とても愛おしかった。
「蘭」
「んー」
「テスト、赤点なかったらコーラ奢るよ」
「私別にコーラ好きじゃないんだけどなぁ」
「まあまあ。そういえば蘭とこの文化祭いつ?」
「9月の終わり」
「ふうん」
「絶対来てね」
「あたりまえ」
「蘭」
「うん」
「今日も好きだわ」
綺とたわいない会話をするたび、何気ない日々が愛おしくなる。
綺が私の名前を紡ぐ度、胸がいっぱいになる。
好きだと言われるたび、生きていてよかったと思う。
そしてその度に、
「ふはっ、私も!」
きみのことが、好きだと思うのだ。
夜の風が頬を切る。
つめたくて、それがとても気持ちよかった。