きみと真夜中をぬけて




「気持ちいいってより、自分を誤魔化すことが出来る害煙ですね」

「はあ、なるほど」

「まあ、気休めにはなるかもですが。煙草、まだやってないなら手は出さない方がいいです。お勧めしません。金銭的にも健康的にも」

「はは、まあ、やらんすよ」



やらんのかい。じゃあなんでそんな興味津々そうに聞いたんだよ。

心の中で突っ込みながら「是非そうしてください」と返す。



「あ、袋いらないです」



断りを入れて、小さく会釈をする。僕にならい、ゲンチュウさんも同じように小さく会釈をした。


「あざましたー」



コンビニ店員の適当な挨拶が、僕は本当はちょっと好きだ。

煙草に頼らず、楽しさだけで生きていたあの頃の感覚が戻ってくるような気がするから。



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