きみと真夜中をぬけて
「俺はさ、星とか夜とか。そういうものの概念…っつーのかな。そこにあるだけで、無知なままぼーっと見つめられるから。その時間が好きなんだ。もはや感謝すらしてんのね」
「感謝…」
「そう、存在にな」
夜と星の概念。
辞書的意味ではとても端的だろうけど、綺にとっては言葉ではうまく表せられないほどの意味があるのだろう。
数えきれないほどひとりの夜を越えてきているのに、夜に感謝なんてしたことはない。
綺の感性はどこか理解できない。
だけどとても、素敵だった。
「ふうん…」
「もうちょい興味持てんのか蘭」
「いや…、」
「なんだよもぉー…」
「結構、興味、あるよ」
今まで考えたことのなかったこと。
「ふはっ。分かりづらいな蘭は。表情筋が爆死」
「うるさいな」
「堪忍袋も爆死」
「だからもー…うるさいな。いいから、続き。私が知らない綺のこと、もっと教えて」
漠然と、綺と話していれば新しい夜に出会えそうな気がしたから。
ニッと口角を上げた綺は、ひどく楽しそうだった。