きみと真夜中をぬけて
綺が、星が浮かばない空を見上げ、「あーあ、」とぼやく。物憂げな横顔に、一瞬だけ言葉を紡ぐか躊躇った。
部活の内容を正しく理解しないまま入部するなんて、私には到底考えられないことだけど、綺にとっては当たり前のように出来てしまうことなのかもしれない。
後先を考えずに行動する力。
私には無いから、話を聞いて少しだけ 綺が羨ましいとも思えた。
「しかもさ、蘊蓄垂れ流すやつばっかで。スペクトル型とか万有引力とか、そんなん知らんし、話も合わなくて」
「そりゃ私もわからんや」
「だーろぉ?ギリわかったの、ハレー彗星くらいな」
「私はそれもわからん」
「なんかね、すげーレアなヤツなんよ」
「ふーん」
「ふーん、よな。わかる」
綺が関わってきた、彼と解釈不一致の天文部のみなさんは、ここできっと「ハレー彗星とはうんたらかんたら───…」って話し出すような人達なのだろう。
顔を歪ませて「わかんね!」って言っている綺が想像できて、なんだか笑えた。