きみと真夜中をぬけて
「概念だけで良かったんだ、本当に」
「概念…」
「ハレー彗星の蘊蓄をわけわからん用語でダラダラ説明されるより、『今日ハレー彗星見れるらしいよやばくね?興奮するわなんなら勃ってきた』とか言って笑う方数億倍楽しい」
控えめに下ネタを入れてきたところには敢えて触れず「そうだね」と言えば、「勃ってきたは嘘だかんな」と補足される。
突っ込み待ちだったらしい。だったらもうちょっと過激な感じでぶっ込めば良かったのに、と思う。
「詳しいだけが正解なんて思いたくねえのに、部活辞める時、部長に言われたんだ、『君はどうして知識が乏しいのにこの部活を選んだのでしょうか?』ってよ。笑ったわ、フツーに。今でも時々思うけどさ、部長とは来世でも分かり合えんなと思う」
「うん」
「何かを好きになるのに知識とか経験求められてたまるかよ。俺は綺麗な星が見たかった。だけどその理由は普通じゃないって言われてるみたいでさぁ、悔しかったんだ」